要約
会社設立は自分でできるが、許認可が必要な業種・複雑な定款設計・時間コストが高い場合は行政書士への依頼が合理的。費用・時間・リスクを比較して判断する。
会社設立の手続きは自分でできるのか?まず結論を伝える
結論から言うと、合同会社・株式会社どちらも、自分で設立手続きを完結させることは可能だ。法務局への登記申請は司法書士の専門領域であり、行政書士が代行できる業務は「定款作成・認証サポート・許認可申請」に限られる。ただし、設立後に許認可が必要な業種(建設業・飲食業・介護・古物商など)を営む場合は、行政書士のサポートが実質的に不可欠になる。
自分で設立する場合の主な流れは次のとおりだ。①会社の基本事項を決める(商号・本店所在地・資本金・役員構成)→②定款を作成する→③公証役場で定款認証を受ける(株式会社のみ)→④資本金を払い込む→⑤法務局に設立登記を申請する。このうち③の定款認証と⑤の登記申請がハードルになりやすい。合同会社の場合は定款認証が不要なため、さらにシンプルになる。
費用面で見ると、自分で設立した場合の実費は株式会社で約24万円(登録免許税15万円+定款認証手数料5万円+収入印紙代4万円)、合同会社で約6万円(登録免許税6万円)が最低ラインだ。専門家に依頼するとこれに報酬が上乗せされる。では、どのような人が行政書士に頼むべきで、どのような人が自分でできるのかを以下で具体的に整理する。
自分で設立できる人の条件と具体的な作業量
自分で設立できる人には、いくつかの共通点がある。まず「時間的余裕がある人」だ。設立手続きを自力でこなすには、書類収集・作成・法務局との対応で平均10〜20時間の作業時間が必要になる。副業・兼業で起業する人が平日の隙間に進める場合、1〜2ヶ月かかることも珍しくない。専業で取り組めるなら2〜3週間で完了できる。
次に「設立後の事業に許認可が不要な人」だ。IT・コンサルティング・EC・ライター業・デザイン業などは、原則として許認可なしで事業を開始できる。この場合、行政書士に依頼する実務上の必然性は低い。自分で設立手続きを進め、節約した費用を事業資金に充てる判断は合理的だ。
また「合同会社を選択できる人」は特に自力設立のハードルが低い。合同会社は公証役場での定款認証が不要で、電子定款を使えば印紙代4万円も不要になる。法務局への登記申請に集中すれば済むため、ひな形を活用した場合の作業時間は5〜10時間程度に圧縮できる。実際、フリーランスや少人数チームでの起業では合同会社を選ぶケースが増えており、自分で設立する人の割合も高い。
自力設立を支援するツールも充実している。「freee会社設立」「マネーフォワード会社設立」などのサービスを使えば、質問に答えるだけで定款・登記書類のひな形が自動生成される。これらのサービスは無料または数千円で利用でき、初めての人でも書類の全体像を把握しやすい。
行政書士に頼むべき3つのケースと費用の目安
行政書士への依頼が実質的に必要になるケースは主に3つある。それぞれ費用相場と理由を明示する。
ケース1:設立後に許認可が必要な業種
建設業許可・宅地建物取引業免許・飲食店営業許可・介護事業指定・古物商許可・派遣業許可など、行政庁の許認可が必要な事業を始める場合、行政書士のサポートは事実上必須だ。これらの許認可申請は行政書士の独占業務であり、司法書士や税理士は代行できない。
費用の目安は業種によって大きく異なる。建設業許可(知事許可・一般)で15〜20万円、宅建業免許で10〜15万円、介護事業指定で20〜40万円、古物商許可で3〜5万円が相場だ。会社設立と許認可申請をセットで依頼すると、設立書類作成の費用(3〜8万円)が割引になるケースも多い。
ケース2:時間的コストを金銭換算すると依頼したほうが安い人
時給換算で自分の価値が高い経営者・士業・医師・高収入フリーランスの場合、20時間の作業を外部委託した方が経済合理性がある。行政書士に定款作成・認証サポートまで依頼した場合の報酬は3〜8万円が相場だ。自分の稼働時間20時間×時給を上回るなら依頼を検討する価値がある。
ケース3:外資系・複雑な株主構成・複数種類株式を設計する場合
外国人出資者が含まれる場合や、議決権の異なる種類株式(A種優先株・黄金株など)を設計する場合は、定款の記載が複雑になる。誤った定款で登記が通っても、後日のトラブルの原因になる。このような案件では行政書士に定款設計を依頼し、内容の正確性を確保するのが賢明だ。費用は定款設計の複雑さに応じて5〜15万円程度が目安になる。
費用・時間・リスクの3軸で「自分でやる vs 行政書士に頼む」を比較する
判断を迷わせないために、費用・時間・リスクの3軸で比較表形式で整理する。
費用比較
株式会社を自分で設立した場合の実費は約24万円(電子定款を使えば約20万円)。行政書士に定款作成・認証サポートまで依頼すると報酬3〜8万円が加算され、合計23〜28万円になる。一見すると自力の方が安いが、電子定款対応の行政書士に依頼すると収入印紙代4万円が不要になるため、「行政書士報酬3万円+電子定款」で依頼すると実費削減分と相殺され、実質的な追加コストがほぼゼロになるケースもある。
合同会社の場合は実費約6万円(電子定款使用で約6万円・印紙不要)。行政書士への定款作成依頼で2〜5万円が加算される。合同会社の設立コストは元々低いため、自力設立のコストメリットが出やすい。
時間比較
自力設立にかかる時間の目安は、株式会社で15〜25時間、合同会社で5〜15時間だ。書類の不備があると法務局から補正を求められ、往復で1〜2週間のロスが生じる。行政書士に依頼すると、依頼者の作業は書類への押印・公証役場への同行(または委任状)程度で、2〜4時間に圧縮できる。
リスク比較
自力設立の主なリスクは「定款の記載ミス」「登記書類の不備」「設立後の許認可要件を満たさない会社定款」の3つだ。特に事業目的の記載は許認可申請の要件と連動するため、設立後に定款変更(費用3〜6万円)が必要になるケースがある。行政書士に依頼すればこのリスクはほぼゼロになる。ただし、IT・コンサル等の許認可不要業種で、ひな形を慎重に使う場合はリスクは限定的だ。
行政書士と司法書士の違い:設立手続きでどちらに頼むべきか
会社設立の相談先として「行政書士」と「司法書士」のどちらに頼めばいいか混乱する人も多い。業務範囲の違いを明確にしておく。
登記申請(法務局への申請)は司法書士の独占業務だ。行政書士は登記申請を代行できない。一方、定款の作成・公証役場への提出代行・許認可申請は行政書士の業務領域だ。つまり、会社設立の登記手続きを専門家に丸ごと依頼したい場合は「司法書士」、設立後の許認可申請まで含めてトータルサポートを受けたい場合は「行政書士」、または両業務に対応できる事務所を選ぶ必要がある。
実務では「設立登記は司法書士、許認可は行政書士」と役割分担するケースが多い。総合的な士業事務所では、行政書士と司法書士が連携してワンストップで対応するサービスを提供している。費用相場は設立登記(司法書士)で5〜15万円、定款作成+許認可申請(行政書士)で業種により異なるが、合計で10〜30万円のプラスαが目安だ。
最終的な判断基準はシンプルだ。「許認可が必要な業種か」「自分の時間コストはいくらか」「定款設計に複雑な要素があるか」の3点を確認し、1つでも該当するなら専門家への相談を検討する。許認可不要で時間があり、シンプルな株主構成なら自力設立で十分に対応できる。
よくある質問
- Q.会社設立の定款作成だけ行政書士に頼むことはできますか?
- A.可能です。定款作成・認証サポートのみの依頼で3〜8万円が相場。登記申請は自分で行うか別途司法書士に依頼します。
- Q.行政書士と司法書士、会社設立はどちらに頼めばいいですか?
- A.登記申請は司法書士の独占業務。定款作成・許認可申請は行政書士の業務。許認可が必要な業種なら行政書士、登記まで丸ごと依頼なら司法書士が窓口になります。
- Q.合同会社を自分で設立する場合の費用と時間はどのくらいですか?
- A.実費は登録免許税6万円のみ(電子定款使用で印紙不要)。作業時間は5〜15時間が目安。株式会社より大幅にシンプルで自力設立に向いています。