要約
デジタル庁が行政手続オンライン化の先行実証を更新。電子申請化が進んでも行政書士法の無資格代行禁止は適用され、2026年改正でリスクはさらに高まる。法務担当必読。
2026年5月22日、デジタル庁は「行政手続のオンライン化に関する先行実証参加自治体と対象手続きを更新した」と発表した。行政書士法が定める無資格代行の禁止規定は、手続きのデジタル化が進む今こそ、企業の法務・コンプライアンス担当者が改めて確認すべき重大リスクをはらんでいる。
デジタル庁の先行実証更新とは何か:許認可申請への波及
デジタル庁が2026年5月22日付で公表した「行政手続のオンライン化に関する先行実証」の更新情報によれば、参加自治体の範囲と対象手続きが拡充されている。同日にはマイナンバーカード関連情報(自治体向けVol.122・民間事業者向けVol.138)も更新されており、オンライン行政手続の基盤整備が着実に進んでいることが確認できる。
こうした動きは、許認可申請・在留資格・農地転用・相続手続きといった行政書士業務の対象領域においても、電子申請への移行が加速することを意味する。申請のデジタル化が進めば「入力代行」「書類作成サポート」といった名目で無資格者が関与するケースが増えると、専門家の間では懸念が高まっている。
行政書士法が禁じる「無資格代行」:オンライン申請でも適用される
行政書士法(昭和26年法律第4号)第19条は、行政書士でない者が業として官公署提出書類の作成および提出手続代理を行うことを禁止しており、違反した場合は1年以下の懲役または100万円以下の罰金(同法第21条)が科される。重要なのは、申請が紙からオンラインに変わっても、この規制の射程は変わらない点だ。
日本行政書士会連合会(日行連)が公式サイトで明示しているように、行政書士の業務範囲は「官公署に提出する許認可等の申請書類の作成並びに提出手続代理」全般に及ぶ。電子申請ポータルへの入力作業であっても、それが「他人の依頼を受け報酬を得て」行われる場合、行政書士資格のない者が担うことは行政書士法違反となり得る。
さらに2026年改正行政書士法では監督・処分規定の整備が議論されており、従来よりも摘発・指導のハードルが下がるとみられる。企業が外部の「代行サービス」や「コンサルタント」に許認可申請・補助金申請を委託する際は、相手方が行政書士資格を持つか、あるいは行政書士と連携しているかを必ず確認しなければならない。
企業の法務担当が今すぐ確認すべき業務委託リスクのチェックポイント
デジタル行政の進展は利便性を高める一方、アウトソーシング先の「無資格代行」リスクを見えにくくする側面もある。以下のチェックポイントを活用し、コンプライアンス上の盲点をつぶしておきたい。
- 委託先の資格確認:許認可申請・在留資格申請・帰化申請等を外注する場合、相手方が日本行政書士会連合会の登録行政書士であるか、行政書士会の会員検索で確認する。
- 契約書の業務内容:「コンサルティング」「書類整理サポート」「申請フォーム入力代行」等の名目で官公署提出書類の実質的な作成・送信を担わせていないか確認する。
- 報酬の有無と業務実態:無報酬であっても、反復継続して行政書士業務に該当する作業を行えば「業として」とみなされるリスクがある。実態を精査すること。
- 両罰規定の適用:行政書士法第22条の2に定める両罰規定により、違反行為者本人だけでなく法人も処罰対象となる。発注企業側も違反リスクを負う点に注意。
- オンライン申請サービスの利用規約:デジタル庁・各省庁が提供する電子申請システムには「代理申請者の資格要件」が定められている場合がある。利用前に必ず確認する。
2026年改正行政書士法と今後の展望:デジタル化で規制は緩まない
行政手続のオンライン化が加速する中、一部では「デジタル化によって誰でも簡単に申請できるようになるため、行政書士への依頼は不要になる」という誤解が広まっている。しかし実態は逆だ。電子申請化は手続きの「入口」を変えるに過ぎず、申請要件の判断・書類内容の適法性チェック・添付書類の選択といった専門的作業は依然として必要であり、むしろ誤申請によるリスクは増している。
2026年改正行政書士法の議論においても、デジタル行政環境に対応した無資格代行への対処が論点のひとつとして挙がっている。総務省が進める「デジタルを活用した行政サービス改革」との連動もあり、行政書士の専門性が求められる場面はむしろ広がっていく可能性が高い。
企業の法務担当者は、電子申請への移行をきっかけに業務委託先の資格要件を再点検し、行政書士法違反リスクを早期につぶしておくことが、コンプライアンス上の急務といえる。社内規程の整備、委託先の定期的な資格確認、そして行政書士との顧問契約の検討が、今後の実務対応における三本柱となるだろう。
よくある質問
- Q.電子申請への入力作業を外注しても行政書士法違反になりますか?
- A.はい。官公署提出書類の作成・送信を報酬を得て代行する行為は、電子申請であっても行政書士法第19条の無資格代行禁止規定の対象となります。
- Q.行政書士法の両罰規定とは何ですか?発注企業も処罰されますか?
- A.行政書士法第22条の2の両罰規定により、違反行為者本人だけでなく、その行為者が所属または委託された法人も罰金刑の対象になります。発注企業も処罰リスクを負います。
- Q.委託先が行政書士かどうかはどうやって確認すればいいですか?
- A.日本行政書士会連合会のウェブサイトに会員検索機能があります。都道府県の行政書士会へ問い合わせる方法も有効です。契約前に必ず確認してください。